脊髄性筋萎縮症(SMA)とは

脊髄性筋萎縮症(SMA)は、運動のために使用する筋肉を保つために必要な運動神経が徐々に減少し、筋力が低下したり、筋肉がやせ細ってしまう遺伝子の病気です。

SMAによる影響は患者さんひとりひとりで異なりますが、症状が始まった年齢と運動発達によって、大きく4つのタイプに分類されます。共通するのは、進行性に筋力が低下することによって、運動機能に影響がみられることです。

特に、生後半年までに発症するSMAは進行がとても早いため、速やかな治療開始が重要になりますが、現在は治療法があり、症状が現れる前や、症状が進行する前に治療を開始することで改善がみられるようになりました。

脊髄性筋萎縮症(SMA)とは

SMAの症状と経過

SMAは原因となる遺伝子(SMN1遺伝子)が、生まれつきはたらきをもたないことが原因で発症します。SMAの診断では、この原因遺伝子であるSMN1遺伝子と、 SMN1に似ているはたらきをするSMN2遺伝子の数(コピー数)を調べます。

SMN1遺伝子のコピー数は、SMAの発症後にどのような経過をたどるかの予測にもなります。

全体の約6割でみられるⅠ型SMAは、生後6ヵ月までに発症し、治療をしていない場合、母乳やミルクを飲む力が弱い、首がすわらない、寝返りをうてないなどの症状が現れてきます。

各型のSMA患者におけるSMN2コピー数の割合

各型のSMA患者におけるSMN2コピー数の割合
Feldkötter M, et al.: Am J Hum Genet; 2002, 70(2): 358-368.

治療開始のタイミングと運動機能の推移(イメージ)

治療開始のタイミングと運動機能の推移(イメージ)

SMAの原因は1、2

脊髄前角細胞の変性はSMN(survival motor neuron)タンパク質というタンパク質が不足することによって起こると考えられています。

SMAのない人では、SMN1遺伝子が、SMNタンパク質をつくっています。
SMAのある人は、SMN1遺伝子が生まれつきはたらかず、そこから作られるSMNタンパク質が足りなくなります。
SMNタンパク質はからだを動かす運動神経に重要なもので、それが足りなくなることで、筋肉が少なくなったり、力が入りにくくなったりします。
※ほとんどのSMAはSMN1遺伝子の欠失または変化によって起こりますが、ほかの遺伝子が関わっている場合もあります3,4,5

SMAのない人とある人
  1. National Organization for Rare Disorders. Spinal muscular atrophy.
    https://rarediseases.org/rare-diseases/spinal-muscular-atrophy/ Updated 2020.Accessed April 1, 2024.
  2. Lunn MR, et al.: Lancet. 2008; 371(9630): 2120-2133.
  3. Lefebvre S, et al.: Cell. 1995; 80(1): 155-165.
  4. Sugarman EA, et al.: Eur J Hum Genet. 2012; 20(1): 27-32.
  5. Wirth B.: Hum Mutat. 2000; 15(3): 228-237.